「補助金」と「助成金」
よく「補助金と助成金はどう違うのか?」という質問を頂きます。
補助金と助成金は、いずれも国や自治体から申請者に対してお金が交付される制度ではありますが、明確な違いがあります。
まず「補助金」ですが、起業の促進や地域の活性化、中小企業の振興や技術の振興等の施策等を目的として、主に経済産業省が実施しているものを指します。
これに対し「助成金」は企業における雇用面について厚生労働省が実施しているものです。
(この点、「補助金業務」は弊社を含め「行政書士」業務となりますが、「助成金業務」は人の雇用を前提とするものですので基本的に「社会保険労務士」業務です。)
補助金の交付を受けるためには、補助金の種類によって独自の募集要件を満たしたうえで申請することが必要で、審査を通過(採択される)することで初めて補助金の交付を受ける資格が得られます。
採択率は補助金によって大きく幅があり、数パーセントのものから80%台のものまで様々です。
同じ補助金を年数回にわたって募集することもあり、その回によって採択率が異なることもあります。
また、同じ補助金でも年度によって要件が異なるのも大きな特徴です。
この点、国だけでなく都道府県、市町村等の自治体が地域内の産業の振興等を目的として独自に補助金を実施することも多いです。
自治体によって内容は異なりますので、検討する前に十分に情報収集する必要があります。
「公募期間」について
補助金の申請を受け付ける期間を「公募期間」と言います。
基本的に1ヵ月~数か月とタイトなことが多いですが、補助金の内容や申請要件を含め、公募期間は予め「公募要領」で公表されます。
早い段階で公募要領を確認して、申請書の内容や必要書類を準備しておくようにしましょう。
「補助対象経費」について
補助金の対象となる経費を「補助対象経費」と言います。
言い換えれば何に対して補助金が受けられるのか、ということです。
補助金の種類によって何が補助対象経費に該当するかは異なりますので、公募要領等をしっかり読んで検討する必要があります。
この「補助対象経費」に該当しなければ当然ながら補助金の対象にはなりません。
一般的に、補助対象となる経費は各補助金事業の対象として明確に区分できるものであり、また、その経費の必要性及び金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できる経費が該当します(何が「補助対象経費」にあたるかは補助金の種類によって異なります)。
ほとんどの補助金は申請する各企業の「あるテーマ」について交付されますので、社内の一般的な業務にも使用できるような設備は補助対象にはなりません。
また、基本的に補助金の交付決定を受けた日付以降に発注などを行い、事業実施期間内に支払いを完了した設備が対象になりますので、予め購入したものは補助金の対象外となります。
「補助金交付決定」について
補助金の申請後、審査を経て補助金の事務局が「採択」を決定します。
採択の決定後、補助金の交付対象として事業を正式に認められれば「補助金交付決定」がなされます。
基本的にこの「補助金交付決定」がなされた後に補助対象経費の発注・契約・支出を行わなければなりません。
「事業実施期間」について
補助金の交付決定から、行政が定める一定期間終了期限までの期間を指します。
予め定められたこの「事業実施期間」の間に発注や納品、支払い等が行われた補助対象経費が補助金の対象になります。
逆に言いますと、この期間外に行われた発注や納品、支払いは補助金の対象になりません。
せっかく採択を受けて補助金交付の対象であるのに、この事業実施期間を守らないばかりに採択を受けながら補助金が交付されない、ということがないよう注意しましょう。
補助金は法律等に基づいて厳格に進められます
補助金交付決定=お金が貰えるわけではありません。
補補助金交付決定後、採択を受けた事業者は補助事業の実施を開始します。
補助事業の終了後は取り組んだ内容を報告する「実績報告書」、支出内容が分かる関係書類等を定められた期日までに補助金事務局等に提出しなければなりません。
補助金交付決定を受けていても定められた提出物の提出を怠ると補助金の提出が受けられません。
最初に補助金が交付されるわけではありません。
補助金のメリットが原則として「返済不要」という点にあることは間違いありませんが、ほとんどの補助金が「後払い」であることには注意しなければなりません。
申請=即入金というわけではなく、あくまで補助金の交付が認められた上で入金されるものです。
したがって申請者は自己資金や融資等であらかじめ資金を準備する必要があります。
重複して補助金を受けられない場合があります。
補助金申請の前に理解すべきこと
「なにかいい補助金はないの?」
補助金の相談はこのフレーズから始まるケースがとても多いです。
ここには大きな誤解が3つあります。
1つ目が「補助金は申請すれば必ず貰えるもの」という誤解です。
補助金はその申請内容が補助金の原資たる「税金」を投入する必要性があるかどうかを判断しますので、厳格な審査を経て採択が決定されます。
そのため申請すれば必ず採択されるという性質のものではありません。
体裁を整えて申請しても、事業計画通りに進められなければ最悪補助金の返還を求められるという事態もあり得ます。
2つ目が「補助金は簡単な書類を揃えれば申請できる」という誤解です。
補助金申請はいわば採択を受けるためのプレゼンです。明確な事業計画を策定し、それを第三者たる審査機関へ理解して貰うためには文章による説得だけでなく図表、写真を用い、かつその計画が実現可能であることを様々なエビデンスを駆使して理解して貰う必要があります。しかもその計画は確実に実施されるものであることが前提で、結果を求められます。
書類数枚、テンプレートで説明できるものではありません。
3つ目が「採択されればすぐ入金される」という誤解です。
大前提として、補助金交付の前に自己資金や金融機関からの借入を原資として設備を購入するのは申請者たる企業です。補助金が交付されるのはそれらを完了した後ですので、つまり「立替払い」が原則です。例えば補助金を利用して製造設備を購入したいのであれば、補助金の交付申請を行って採択されたあとに一旦自社で設備を購入し、その後に補助金の交付を受ける、という流れになります。
補助金は事業計画に対して交付されるものです。
「補助金を貰うために何か考える」のではなく、「確固たる事業計画があって、それに補助金が使えそう」という順番で考える必要があります。言い換えれば「補助金を受ける受けないに関わらずやりたい事業計画がある」という思考が正しいと言えます。